石版画工房日記-2
カラーリト(多色刷り)その20 転写リト

       
2010.10.21.
転写リトについて。
         
いつもは石に直接絵を描いちゃうのだが、
「転写紙」というのに描いて、それを石に写し取って版にするやりかた。
利点は、重たい石を持ち歩かないで別の場所で描ける。
または石に描くのでは得られない質感の絵を作ることができる。
というわけで、私は後者の理由で転写リトを使うこともある。
       
転写リトに使う紙は、表面に水で溶ける糊の成分が塗ってある
「チャイナペーパー」というのが売っているが、手に入りにくいので、
ケント紙のような丈夫な紙を水張りして、
アラビアゴムを水で薄めた物を刷毛で塗って乾かせばできる。
          
石に描く時は「逆図」つまり左右ひっくりがえった絵を描くが、
転写紙に描く絵の向きは「正図」、つまりうらがえさない。
これを石に写す時に絵がひっくりかえるから。
石に描くとき 版(逆図)→できあがり(正図)
転写紙に描くとき 転写紙(正図)→ 版(逆図)→できあがり(正図)
転写紙の大きさは、石の内側に余白分を空けたぐらい。
          
というわけで、転写リトにしかできない「テクスチャ」作り。
ザラッとした壁に紙を当ててクレヨンでこする。
でこぼこを紙に写し取る「フロッタージュ」という描画。
          
石の準備。普通に磨いた後、磨石でツルツルにして、
通常は目立てをするのだが、目立て無しでツルツルのまま使う。
石の表面にスプレーで水を掛けて転写したい絵をのせる。
のせた後も紙の裏側からスプレーで水分をじゅうぶんい与える。
あて紙をして、プレス機を通して圧をかける。
刷りの時は一回通すだけで紙をはがすが、
紙を動かさずにそのまま何度か往復させて何度も圧をかける。
紙の端っこをめくってみる。絵が写っていたらはがしてよい。
写ってなかったらもう一度紙の裏からスプレーで水を与えてプレスする。
転写紙を完全にはがす。はがれ難かったら紙の裏を湿らせる。
ただし、絵の方に水がかからないように注意する。
乾かして普通に製版する。
            
2010.10.27.
転写リトを第二製版してみたが、うまく写ってなかった・・・
あまりにスカスカの版になってしまったので酢酸で洗って加筆した。
ぜんぜん違う絵になってしまったがまあいいか。
再び第一製版からやりなおし。
           
あとから思い出したのだが、転写リト第二製版の失敗は、
「磨き石版」は砂目が立ってないので、
裏革ローラーでは製版インクの「食いつき」がよくない。
ゴムローラーでプリントインクを転がすだけでよかったのに。
久々なので忘れていた。
        
チャイナペーパーが使い慣れていないとうこともあるので、
あとで自作の転写紙で再チャレンジしたい。
         

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