〜日記のようなコーナー〜

2001年3月5日
IDENTIDAD(アイデンティティ)と異文化
ペルー人音楽家の友人に以前訊いたことがある。
「日本人がアンデス音楽をやることをどう思っているか?」
彼は少し考えて、
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「僕は"Yo soy el Indio!"(私は先住民インディオだ!)と言ったり唄ったりしているが、厳密にはメスティソ(混血)であり、征服者スペイン人の血が僕の中にも流れてしまっている。そのことで色々迷いがあった。少し苦しんだ。しかし、自分の国の歴史や文化をできるかぎり吸収することによって、先住民の気持ちを取り戻して唄いたいと思っている。これは君たちの問題である前に僕自身の問題、自分のアイデンティティの問題であって、簡単に答えは出せない。」
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といったマジ話になってしまった。
私はかなり気軽に「日本人てポンチョ似合わねーな」ぐらいのノリで訊ねてしまったので、ちょっと困惑してしまった。
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私自身の考えとしては、日本人がペルー人になりきるとかそういう以前に、自分は他人にはなれない。それはあたりまえなので、他人への尊敬の気持ちが何より大切だ思う。だからって、どうするのが一番良いかというとやっぱり答えが出ない。だから本当はあの時友人に「嫌だ!」か「いいんじゃない?」かどっちか答えが欲しかったんだけど。
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外国で日本を紹介する本やテレビや「日本風にアレンジしました」と言う曲など、時々トンデモナイものがある。しかし、それが全部腹立つかといえば、そうでもない。もしも「お葬式の映像」なのに「新年の儀式」とか説明してたら「うーん、ちょっと・・・」となってしまうが、「結婚式の映像」で「豊作を祈る儀式」とあったら、そういう意味も無くはないから、当らずとも遠からず、かえって感心するかもしれない。
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TUBEの前田(飯島直子のダンナ)が以前「今回の曲はサンバをイメージしてブラジルでレコーディングしてきました」と言っていたが、なぜかポンチョにソンブレロ(メキシコの帽子)をかぶって唄っていた。「何じゃこりゃあ!」と私はちょっとムカついたが、この曲はまあまあ売れていた。福山雅治も似たようなことをやっていたが、さすがにソンブレロはかぶってなかったし、イイ男なので許す。いや、何を言ってるんだ。
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海外でヒットした唯一の日本の曲「上を向いて歩こう」は何でタイトルが「スキヤキ・ソング」なんだ!と納得いかないが、とりあえずどこに行ってもこの唄で歓迎してもらうので、その有難さにくらべりゃあスキヤキだろうがテンプラだろうが良いか、と思った。
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自分の古い絵で、いくつか省いていたものをまた取り出して眺めてみたのだが、
ペルー旅行へ行く前に、ほとんど何も見ずに友達の音楽を聴いたりして想像して描いたものが、意外にのびのび大胆に描いてるなあ、と改めて思った。
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でも実際にこんな絵のような人には会わなかったし、次々と細かい間違いにいっぱい気づいてしまい、誰にということなく遠慮して描きづらくなってしまった。
誰が何を言うでもないんだけど、自分で足かせをしてしまったようだ。確かに誰も傷つかないし、誰かに何かイチャモンをつけられる心配もないから自分も傷つかない。でも、これで良かったんだろうか?

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